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Q7.医療裁判の流れ相談からの流れ

弁護士に依頼して、病院の責任を追及する訴訟を起こすことにしました。
そこで、具体的なイメージを持っておきたいのですが、医療裁判とはどういう風に進行していくのでしょうか。
医療裁判の中で何が行われるのか、また、全体としてどれくらい時間がかかるのか、教えてください。

1.医療裁判の進行

医療裁判の手続き(第1審の手続き)はおおむね次のように進みます。

(1)提訴

医療裁判を含め、すべての民事裁判は、始めに、裁判所に「訴状」を提出します。民事裁判では、裁判を起こす人(医療事件では通常、医療被害者、その家族・遺族)を「原告」、裁判を起こされる人(医師、医療機関)を「被告」といいます。

訴状には、主として「請求の趣旨」と「請求の原因」を書きます。

「請求の趣旨」は、原告が被告に対して求めることを書いたものです。具体的には、被告にいくらの損害賠償金の支払いを求めるのかを書きます。医療被害を受けた方は、必ずしもお金の解決を望んでいる訳ではありません。しかし、日本の民事裁判は、金銭賠償(損害を金額に換算して、お金で支払うこと)を原則としています。したがって、裁判では、被告の医師・医療機関に対し、後遺症を治療することを求めたり、謝罪を求めたりすることはできません。

「請求の原因」には、原告の請求の理由や根拠を書きます。

具体的には、
①医師・医療機関が起こしたミスの内容(過失)
②医師・医療機関のミスにより死亡や後遺症が生じたこと(因果関係)
③死亡や後遺症による損害の金額(損害)
④上記①、②、③の前提として、被害発生に至るメカニズム、つまり、どのような事実の流れによって患者の身体に被害が生じたか(医学的機序)を書きます。

訴状は、裁判所から、被告の医師や医療機関に送達されます。

(2)争点整理

訴状を提出してから約1ヶ月半後に第1回期日があります。第1回期日に、被告は、「答弁書」を提出します。「答弁書」には、訴状に書いてある原告の請求を認めるか認めないのか、原告の主張する請求の理由や根拠が正しいと考えるのか間違っていると考えるのかが記載されています。

さらに、第2回期日以降には、原告も被告も、訴状や答弁書の内容を補充する言い分を記載した「準備書面」を提出します。

また、訴状、答弁書、準備書面を提出すると同時に、カルテ、医学文献、協力医の意見書なども「書証」(証拠とする文書)として提出します。

このように、訴状、答弁書、準備書面、書証の提出によって、原告と被告の言い分のどこが一致しており、どこに食い違いがあるかを明らかにして、「争点」(原告と被告の言い分に食い違いがある部分)を明確にします。このような手続きを「争点整理」といいます。

(3)証拠調べ

「証拠調べ」では、担当医、担当看護師、医療被害者本人、医療被害者の家族・遺族などが法廷で証言をします。事案によっては、原告または被告の協力医が法廷で証言をすることもあります。

証拠調べは、争点について行われます。原告と被告の言い分が一致している部分(争いない事実)については、証拠調べを行いません。

(4)鑑定

事案によっては「鑑定」が行われることがあります。

「鑑定」とは、裁判所が選任した医学的知識を有する専門家に専門的知識に基づく意見を求めることです。鑑定は、書面(鑑定書)で行われることもあれば、口頭で行われ、その結果が調書に記録されることもあります。

東京地方裁判所における鑑定は、3人の医師に簡易な意見を書面で提出してもらい、後日、裁判所に一堂に会して、裁判所の質問に答える形で行われます。この方式は「カンファレンス鑑定」と呼ばれ、口頭で行われる鑑定の一つです。

(5)和解

審理の途中で、裁判所が間に立って、話し合いが行われることがあります。話し合いの結果、原告と被告の双方が譲歩して合意に至れば、「和解」が成立し、裁判が終了します。

和解したときには、医師、医療機関に法的責任があるかどうかについて、裁判所の判断は必ずしも出ません。それでも和解をするメリットは、判決では得ることができない医師・医療機関の謝罪を得ることができる場合があること、充分な立証ができているかどうかに不安が残るときに、全面的に敗訴するリスクを避けることができることなどにあります。

(6)判決

原告と被告がすべての言い分を主張し、すべての証拠調べが終わった段階で、裁判所は、審理を終えて(弁論終結)、判決言渡し期日を定めます。弁論終結から判決言渡しまでは、通常、2~3ヶ月かかります。

2.裁判を始めてから終わるまでの期間

最高裁判所の発表によると、医療関係訴訟(第1審)の平成26年の平均審理期間は、22.6ヶ月です。

相談からの流れ