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医療問題弁護団

プレスリリース

日付 :2019年3月
2019年3月7日

レーシック手術による被害に関する損害賠償請求集団訴訟
一部(過矯正による術後遠視に関する被害)
「勝訴的和解」のご報告

レーシック被害対策弁護団
団長 弁護士 梶浦 明裕

(お問い合わせ連絡先)
東京都千代田区神田司町2-5 カツハタビル4階
東京あさひ法律事務所
電話 03-3293-3621 FAX 03-3293-3627
事務局長 弁護士 藤田 陽子

1 事件の概要

(1) 医療法人社団翔友会(東京都港区港南2丁目6番3号シントミビル8階 理事長綿引一)が開設する品川近視クリニックにおいて、等価球面度数を超える屈折矯正量を入力した手術により、又は完全矯正、低矯正のメリット、デメリットにつき十分な説明がなされないままレーシック手術を受けた6名の患者(平成18年12月~平成25年9月手術)に、過矯正による術後遠視によって眼精疲労の被害が生じたという事件です。

平成26年12月27日に原告12名、平成27年10月30日に原告9名がレーシックによる後遺症等被害につき損害賠償請求訴訟を提起しました(集団訴訟)。

本件は上記集団訴訟の原告のうち6名についての事件となります。

(2) 遠視とは、屈折異常の1つであり、調整力を働かせていない状態で平行光線が網膜より後ろに焦点を結んでしまう状態です。近視と異なり、遠くのものも、近くのものもはっきりと見ることができません。※1

レーシック手術後に起こる症状の原因として多いものが過矯正といわれています。過矯正による術後遠視となると、恒常的に調節筋を酷使していることになるため、眼に多大な負担がかかり、その結果、眼精疲労を引き起こし、頭痛やめまい、吐き気などの症状を引き起こし、更に悪化すれば鬱症状につながる危険性もあるとされています。※2


2 過矯正による術後遠視の被害に関する損害賠償請求訴訟について

(1)本件の経緯

平成25年12月4日 消費者庁による発表「レーシック手術を安易に受けることは避け、リスクの説明を十分受けましょう!」※3
平成25年12月21日 当弁護団によるホットライン第1弾実施
平成26年12月17日 第1次提訴(原告12名。うち本件原告5名)
平成26年12月21日 当弁護団によるホットライン実施第2弾
なお、現時点までの電話総数のうち約62%が品川近視クリニックに関する相談。
平成27年10月30日 第2次提訴(原告9名。うち本件原告1名)
平成30年1月30日 証人尋問(医師3名)、本人尋問(本件原告2名)
平成30年3月22日 別件ドライアイ事案(原告4名)につき和解成立
平成30年7月12日 証人尋問(医師1名)、本人尋問(本件原告4名)
平成30年8月9日 別件網膜剥離事案について判決
平成30年12月28日 別件網膜剥離事案について和解
平成31年3月7日 本件原告6名について和解成立。

(2)訴訟の争点

原告ら6名は、品川近視クリニックにおいてレーシック手術を受けたところ、過矯正(術後遠視)による眼精疲労の被害が生じた。


ア 屈折矯正量設定義務違反ケース

近視レーシック手術において、等価球面度数(近視度数+乱視度数の2分の1)を超える屈折矯正量を入力して手術を行った場合、低矯正(ここでは予定すべき屈折矯正量よりも実際の屈折矯正量が少なくなることをいう)、または、術後にリグレッションが生じない限り過矯正による術後遠視となる。

しかし、近視レーシック手術においては、予定した屈折矯正量と実際の屈折矯正量を完全に一致させることができず、リグレッションはその発生機序すら判明しておらず、手術前に低矯正の発生やその程度を事前に正確に予測することはできないことからすれば、等価球面度数を超える屈折矯正量を入力する近視レーシック手術は術後遠視となる危険性が高い。

近視レーシック手術において、等価球面度数(近視度数+乱視度数の2分の1)を超える屈折矯正量を入力して手術を行った場合、低矯正(ここでは予定すべき屈折矯正量よりも実際の屈折矯正量が少なくなることをいう)、または、術後にリグレッションが生じない限り過矯正による術後遠視となる。

そして、術後遠視になると、眼精疲労がもたらされ、その症状は加齢に伴いより強いものになるのであって、これらは上記手術に付随する危険性というべきである。

したがって、被告医院の医師は、等価球面度数を超える入力値のレーシック手術については、低矯正になるかリグレッションが生じるかはいずれも不確実であるが、それらが生じない限り術後遠視となる危険性が高く、術後遠視になれば調節機能に負担がかかり眼精疲労をもたらすことが手術に付随する危険性であることについて、患者のインフォームド・コンセントをした上でなければレーシック手術を実施してはならない注意義務を負っていた。

にもかかわらず、被告医院の医師は、上記注意義務に違反し、インフォームド・コンセントなしに等価球面度数を超える入力値のレーシック手術を実施しており、注意義務違反の過失が認められる。


イ 説明義務違反ケース

近視レーシックの手術には、完全矯正(正視の状態、1.2~1.5以上の視力を目標とする手術)と低矯正(やや近視寄りの0.8~1.0程度の視力を目標とする手術)の2種類の術式があるところ、被告医院の医師は、患者が自身のライフスタイルにあったものの見え方になる術式を選択できるように十分に時間をかけて、それぞれのメリット、デメリットを対比して説明すべき説明義務を負っていた。すなわち、

・完全矯正により正視の状態となれば、年齢が20代で調節機能が良好なときは「ものの見え方」が良くなる。

しかし、角膜表面の乾燥状態(含水率)によって同じエキシマレーザーを照射しても切除率が異なってくるため、術中の角膜が乾燥気味であることや、レーザー治療室が通常よりも乾燥していることで、レーシック手術における屈折矯正量が予定していた量よりも多くなる等、矯正の正確性を完全に確保することはできないから、結果的に過矯正となり、これによって術後遠視となるリスクを確実に避けることができず、術後遠視になると、近方視をするときに調節機能に負担がかかり、眼精疲労がおこることや、術後遠視の矯正のために眼鏡等を含め、結局別途矯正手段を要することになること。
その症状は加齢による調節機能の低下によってより強いものとなること。
加齢により調節機能が低下してきたときに近くのものを見ると調節機能に負担がかかること。
遠視レーシックは、老視になったときに近くを見ることが困難になること、遠視レーシックは、角膜の形状を不自然なものにする上、相対的に精度が低く、術後遠視の再矯正の方法として適切とはいえないこと。
・低矯正では、術後にリグレッションが生じる場合がある等、術後に満足するものの見え方にならない場合があることは否定できないが、再度近視レーシック手術を実施することで改善可能であること。
パソコンを使用した執務の必要等、現代人の生活上の必要に鑑みれば、むしろやや近視寄りの視力を目標とする方が、近くのものを調節機能に負担をかけずに認識できるようになり現代人のライフスタイルに適合しており、加齢によって調節機能が低下しても過度の負担がかからないこと。
仮に過矯正の結果となった場合でも、術後遠視のリスクを回避できること。
などを十分に説明すべきであった。

にもかかわらず、被告医院の医師には、上記説明を行わなかった注意義務違反の過失が認められる。


※1 http://www.nichigan.or.jp/public/disease/hoka_kinshi.jsp

※2 https://www.gankaikai.or.jp/health/39/02.html、「ササッと分かる近視矯正手術「レーシック」で失敗しない本」(吉田憲次著)

※3 http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/131204kouhyou_1.pdf


(3)和解条項

詳細は和解条項<PDF>のとおりです。

なお、本件は、レーシック手術による被害に関する損害賠償請求訴訟(集団訴訟)3件目の解決(勝訴的和解)事案となります。

本件和解は、レーシック手術における過矯正(術後遠視)といった合併症の術前説明(インフォームド・コンセント)のありかたについて、患者の事情を個別に考慮した上で実施すること、今後レーシック手術を受ける患者が誤解することなく正しい理解のもと実施することを求める内容(第3項参照)となっています。

レーシック手術は、何らかの疾患を有する患者が受ける医療行為と性質を異にし、これを実施すべき医学的必要性は相対的に高くはなく正常な角膜に侵襲を加えるものであること、手術の緊急性は通常は全く認められず、しかも侵襲が(眼鏡やコンタクトレンズの場合はレンズが合わなければレンズを変更すればよいのと異なり)不可逆的であること、長期予後には不確定な要素があること、レーシック手術には合併症があること、同じ目的を達する手段として眼鏡、コンタクト等の代替手段があるため、レーシック手術を実施する医師には、より慎重にかつ平易な言葉で説明をし、患者に複数の選択肢について熟慮の機会を与える必要があると考えます。

レーシック手術についてはその数の減少が報道されていますが、原告らも当弁護団も、レーシック手術そのものを否定するものではありません。問題は、医療行為としては考え難い極端に合理化された手術や前提としての説明の在り方にあると考えています。

本件和解は、合併症等についての詳しい説明なしに、レーシック手術の利点ばかりを強調し、過度な誘引行為がなされた営利主義的なレーシック手術に警鐘をならし、抑止する画期的なものであると考えます。


3 今後の活動

本件和解条項に基づき、患者に対し適切な説明、情報提供が行われるよう医療法人社団翔友会に対し、ウェブサイトの記載の修正(現在、レーシックのリスクやデメリットとして過矯正による術後遠視に関する記載はありません)、患者に交付する同意書その他説明文書等の修正を求めていくとともに、他のレーシック手術を行う医療機関に対しても、注意喚起を促していく予定です。

また、レーシック手術によって生じる合併症である過矯正による眼精疲労や、ドライアイ、ガイドライン違反の屈折矯正量でのレーシック手術による見え方の質の低下の治療については、未だ不十分です。また、レーシック手術は長期予後に不確定な要素があり、今後被害が拡大してく可能性も考えられます。そこで、現在被害を訴えている(または被害を訴える可能性のある)方々のためにも、上記症状に対する治療法について、全国の医療機関、学会、医会、海外の医療機関等に働きかけを行っていきたいと考えています。


4 レーシック被害電話相談

他にも多数の被害者がいると考えられるため,レーシック手術を受け,後遺症・合併症が生じたなどの健康被害を生じた方を対象に,引き続き無料電話相談を実施しています。相談者の居住地域、相手方医療機関は限定しません。


医療問題弁護団 電話番号:03-6909-7680
http://www.iryo-bengo.com/

以上
   

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