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日付 :2013年8月

「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」
に対する意見書


平成24年2月より、「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」において、医療事故調査の仕組みが検討され、そのとりまとめとして平成25年5月29日「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」が公表されました。
これに対する意見書を厚生労働大臣に対して提出しました。


「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」
に対する意見書


厚生労働大臣 田村 憲久 殿
平成25年8月22日
医療問題弁護団
代表 弁護士 鈴 木 利 廣
(事務局)東京都葛飾区西新小岩1-7-9
西新小岩ハイツ506 福地・野田法律事務所内
電話 03(5698)8544 FAX 03(5698)7512
HP http://www.iryo-bengo.com/

当弁護団は、東京を中心とする250名余の弁護士を団員に擁し、医療事故被害者の救済、医療事故の再発防止のための諸活動を行うことを通じて、患者の権利を確立し、かつ安全で良質な医療を実現することを目的とする団体である。

平成24年2月より、「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」(以下「検討部会」という。)において、医療事故調査の仕組みが検討され、そのとりまとめとして平成25年5月29日「医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方」(以下「基本的あり方」という。)が公表された。これに先だって、診療行為に関連した死亡事例につき調査を行う第三者機関を設置する方針が示された(平成25年4月20日第12回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会における厚生労働省医政局吉岡総務課長の発言)。

当弁護団は、従前より、医療事故について一元的に報告をうけて、調査・分析を行い、再発防止措置を講じる第三者機関を速やかに設置することを求めてきた。そして、かかる第三者機関ないし医療事故調査制度は、公正中立性、透明性、専門性、独立性、実効性(*1)を備えたものでなければならないと主張してきた。

(*1)公正中立性:中立の立場で、手続と調査内容が公正であること
透明性  :公正中立に調査が行われていることが外部からみて明らかなこと
専門性  :事故分析の専門家によって、原因究明・再発防止を図ること
独立性  :医療行政や行政処分・刑事処分などを行う部署から独立していること
実効性  :医療安全体制づくりに、国が充分な予算措置を講じること

したがって、第三者機関設置の方針が決まったことは、大きな第一歩と評価する。

しかし、「基本的あり方」は未だ基本的骨子しか示しておらず不明確なところがある。また、「基本的あり方」の医療事故調査制度の設計には、医療事故の原因究明・再発防止という制度目的に照らし不十分なところもある。

そこで、当弁護団は、公正中立性等を備えた医療事故調査制度が確立されるよう、「基本的あり方」に対し、下記のとおり意見を述べる。

第1 あるべき医療事故調査制度の概要

1 公的機関・公的財政の必要性

(1) 医療事故調査制度は、医療事故の原因究明及び再発防止を図り、これにより医療の安全と質の向上を図ることを目的とするものでなければならず、「基本的あり方」においても、これを調査の目的としている。
このような公益目的の達成のためには、公的機関が全国的に医療事故調査に取り組む必要がある。

また、平成18年3月「医療事故の全国的発生頻度に関する研究報告書」で報告された医療事故の発生頻度に基づけば、入院患者につき80万件近い有害事象が発生し、うち約18万5000件は予防可能性が高かったものと推計される。
死亡例に限ってみても、有害事象により年間4万人を超える入院患者の死亡が早まっており、うち2万人を超える患者が予防可能性が高かったにもかかわらず死亡していると推計される(*2)。

(*2) 平成18年3月「医療事故の全国的発生頻度に関する研究報告書」(主任研究者堺秀人)では、診療記録をレビューし18病院4389件のデータを集計した。
このうち、入院中に有害事象が発生した件数が263件(6.0%)であり、さらにそのうち、予防可能性が高いと判定された事象が23.2%であった。
また、4389症例中14症例で入院患者が有害事象で死亡が早まり、うち半数(7症例)は予防可能性が高い症例であった。
厚生労働省平成23年患者調査の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/11/)によると、平成23年9月の一般病床に限った推計退院患者数は110万7300人である。
ここから、全国の年間(12ヶ月)退院患者数を約1328万7600人と考えることができる。
この数を入院患者数と同視して上記割合を基に計算すると、入院患者に対する年間有害事象発生件数は、79万6227件、そのうち予防可能性が高いと判定される事象は18万4725件となる。死亡例についてみれば、年間4万2385人が有害事象で死亡し、うち2万1192件は予防可能性が高かったという計算になる。

このように、多数の医療事故及び医療事故死亡例が発生し国民の生命・身体の安全を脅かしていると考えられる現状からすれば、これを防止していくためには個々の医療機関の取り組みでは足りない。

したがって、医療事故調査制度において医療事故の届出を受け医療事故調査を行う第三者機関は、国レベルでの公的な機関でなければならない。

(2) そして、医療事故の原因究明及び再発防止により医療の安全及び医療の質の向上が図られるようにするためには、すべての診療行為に関連した死亡事例を調査の対象として原因究明及び再発防止に努めることが重要であり、全国的に均一で質の高い調査分析が行われなければならない。
公的機関はこのような調査分析ができる専門性を備え、全例の事故調査が行える人的物的資源を投入されたものでなければならず、公的機関の下での医療事故調査制度には十分な国の財政的措置が講じられなければならない。

2 第三者機関による全例調査の実施(院内調査との関係)

医療事故が発生した場合、当該医療機関が再発防止の第一の担い手である以上、当該医療機関が院内において事実関係の調査・整理を行い、原因究明・再発防止策の検討等を行い、再発防止策の実施に自ら取り組むことが重要である。

しかし、院内調査については、診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業(以下「モデル事業」という。)において、従来、依頼医療機関に院内調査報告の様式を示し、院内調査をすることを求めていたところ、「調査内容には差が大きく、院内ならではの情報収集と背景要因の分析に不足がある事例も多かった」とされる(「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業平成24年度事業実施報告書」12頁)。
また、協働型調査についても、中央審査委員会において報告書を「審査する際には報告書の事実記載や評価の論理性が不足しており、審査する上での情報が足りないことが多く記述の不足部分について確認を要した」とされる(同13頁)。

かかる院内調査の現状からすれば、未だ院内調査だけに原因究明及び再発防止を委ねることはできない。前記のとおり、公的な第三者機関が、診療行為に関連した死亡事例全例につき、全国的に均一で質の高い調査分析を行わなければならない。
そして、第三者機関は、院内調査結果が調査分析として不十分と判断される場合には、不十分な箇所を指摘し院内調査の結果を再検討するよう求めるようにして、院内調査についても全国的に均一に質を高めるようにしていかなければならない。

このように第三者機関を中心とした医療事故調査制度を運営する中で、院内調査体制が整備されてくれば、将来的には、一定の医療安全体制を確立し、質の高い院内調査の実績がある等の医療機関については、第三者機関から院内事故調査委員会に調査評価医を派遣し、調査分析を実施したり(いわゆる協働型)、院内で調査分析を実施し報告書を作成して、第三者機関がその提出を受け、院内調査の結果を事後評価するに留めたり(いわゆる院内型)することも考えられる。

3 医療事故調査における中立性・透明性・公正性・専門性の確保

医療事故調査は、「基本的あり方」も示すように、中立性・透明性・公正性・専門性を確保して行われなければならない。
調査にあたる委員の選任や調査の手続きは、かかる性格を確保できるものでなければならない。


第2 「基本的あり方」の各項目に対する意見」

以下、あるべき医療事故調査制度の概要を踏まえ、「基本的あり方」の各項目毎に意見を述べる。

2.調査の対象
○ 診療行為に関連した死亡事例(行った医療又は管理に起因して患者が死亡した事例であり、行った医療又は管理に起因すると疑われるものを含み、当該事案の発生を予期しなかったものに限る。)

〈意見の趣旨〉

調査の対象につき、「当該事案の発生を予期しなかったものに限る」との要件を取り除く。

〈意見の理由〉

医療事故が発生した場合、当該医療機関がその事故を「合併症」と判断することがある。ここでいう「合併症」という言葉は「手術や検査に伴い、十分な注意を払っても起きてしまう悪い結果」という意味合いで用いられている。

しかし、その判断が正しいという保証はない。

例えば、医療機関が「合併症」と判断した事案につき、後に裁判で争われ、裁判所が医療側に過失(注意義務違反)ありと認定した裁判例は数多く存在する(平成20年2月13日名古屋地裁判決・判例タイムズ1298号211頁他)。
また、T大学病院において平成14年から16年にかけて発生した、4人の弁膜症患者が手術後短期間で死亡した事件では、当初、病院は「いずれも合併症による死亡である」旨説明していたところ、後に第三者調査委員会がこの見解を否定し、執刀医の未熟な技術が相次ぐ死亡の原因であったと判断している。
結局、「合併症」とされている事案の中には「医療側の努力によって避けられたであろう悪い結果」が含まれているといえる。

このように、医療事故が発生した当該医療機関による「合併症」であるとの判断は誤っていることがある以上、「合併症」事案はすべて調査の対象として検証に委ね、原因を究明すべきであり、そうすることが医療の安全と医療の質の向上に資する。

また、前記のとおり、年間4万人を超える入院患者が有害事象で死亡が早まり、うち予防可能性が高かったものが2万を超すと推計される。
これに対し、「基本的あり方」にかかる医療事故調制度の創設にあたっては、診療行為に係る死亡事故症例の年間発生件数は1300~2000件と試算されている(第13回検討部会(平成25年5月29日開催)資料3-1)。両者の件数には大きな隔たりがある。
後者の試算は、日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業による年報報告等から試算したものである。同事業においては、報告を求める事案に、「基本的あり方」の調査対象同様、「当該事案の発生を予期しなかったものに限る。」との要件を付している(医療法施行規則9条の23第1項2号ロ)。
上記の件数の隔たりからすれば、かかる要件を付すことによって、何万もの医療事故死亡事例が予期できた合併症に振り分けられ、報告されていないと考えられる。
しかしこれでは、2万件を超す予防可能性が高いと考えられる医療事故事例すらも医療事故調査の対象から外れることになり、真に医療の安全と質の向上を図ることができない。

したがって、医療機関が、当該事案の発生を予期していた「合併症」と判断することによって、調査の対象外とすることは妥当ではなく、調査の対象につき、「当該事案の発生を予期しなかったものに限る」との要件を取り除くべきである。

なお、第3回検討部会(平成24年4月27日開催)において、宮澤構成員が「合併症というと、実は合併症だからいいのだということでは全然ないです。
合併症の中でも避けられた合併症と避けられなかった合併症が本来あるべきなので、避けられる合併症なのに何らかの手段を怠ってしまったことによって起こってしまった、これは過失があるということになりますし、何をやってもこれは合併症として避けられなかった、今の医療の中では回避する方法がなかった、予見可能性もなかったということになると、これは純粋に合併症として仕方がなかった、これは不可抗力と考えるべきだろうという振り分けになるかと思います」と発言しており、本意見と同趣旨と考えられる。

3.調査の流れ
○ 院内調査の実施状況や結果に納得が得られなかった場合など、遺族又は医療機関から調査の申請があったものについて、第三者機関が調査を行う。

〈意見の趣旨〉

(1) 医療機関が第三者機関に届け出た診療行為に関連した死亡事例全例につき、第三者機関が調査を行う仕組みとする。

(2) 遺族による第三者機関への直接申請に基づいて、第三者機関が調査を行うことを明示する。

〈意見の理由〉

(1)について

前記第1のとおり、医療事故の原因究明及び再発防止により医療の安全及び医療の質の向上が図られるようにするためには、公的な第三者機関が、診療行為に関連した死亡事例全例につき、全国的に均一で質の高い調査分析を行わなければならない。

「基本的あり方」の設計では、院内調査の実施状況や結果に納得が得られなかった場合に、当事者の申請に基づき第三者機関が調査を行うこととされている。
しかし、かかる設計は、当事者の納得が得られるか否かという医療事故調査の副次的な効果を、第三者機関の調査開始の要件とするものであり、第三者機関に紛争の解決機関としての性質を生じさせかねず、本来公益を担うべき医療事故調査制度の趣旨にそぐわない。

したがって、院内調査の実施状況や結果に納得が得られなかった場合に、当事者の申請に基づき第三者機関が調査を行うという制度設計は改め、医療機関が第三者機関に届け出た診療行為に関連した死亡事例全例につき、第三者機関が調査を行う仕組みとすべきである。

(2)について

現在運営されているモデル事業においては、医療機関から医療安全調査機構への調査申請に基づき調査分析を行う仕組みが採られており、遺族からの申請に基づいて調査分析は行われていない。

しかし、一般に院内死亡が「診療行為関連死」「事故」であるとの認識は、遺族の疑問や問題意識から始まる。
診療行為に関連した死亡事例全例に対し原因究明及び再発防止を行い、医療の安全及び質の向上を図るためには、遺族からの直接申請に基づき、第三者機関が調査を行うことが重要である。特に、調査の対象を「当該事案の発生を予期しなかったものに限る」とした場合には、前記のとおり、多くの医療事故事例が届出されないことが考えられる。
そうである以上、死亡事故事例を第三者機関が全例把握し調査を行うためには、遺族による直接申請を受けることが不可欠である。

したがって、遺族の直接申請に基づき第三者機関が調査を行うことを、制度に取り入れ、法律ないし運営規則において明示すべきである。

4.院内調査のあり方について
○ 診療行為に関連した死亡事例(行った医療又は管理に起因して患者が死亡した事例であり、行った医療又は管理に起因すると疑われるものを含み、当該事案の発生を予期しなかったものに限る。)が発生した場合、医療機関は院内に事故調査委員会を設置するものとする。
その際、中立性・透明性・公正性・専門性の観点から、原則として外部の医療の専門家の支援を受けることとし、必要に応じてその他の分野についても外部の支援を求めることとする。

〈意見の趣旨〉

(1) 院内調査の中立性・透明性・公正性を確保するため、院内事故調査委員会には外部委員として、患者側弁護士や事故調査の手法について知見を有する有識者等を参加させなければならない。

(2) 医療事故被害者等の患者代表者を外部委員として参加させる重要性を、今後作成するガイドラインに明示する。

〈意見の理由〉

(1)について

「基本的あり方」は、原則として外部の医療の専門家が院内事故調査委員会に外部委員として関与することを予定しているに過ぎず、他分野の外部委員の参加を義務付ける規定がない。

まず、医療事故調査の中立性・透明性を確保するためには、患者側で医療事故問題に関わっている弁護士(以下「患者側弁護士」という。)等、医療者以外の患者の立場に立って活動を行う者を外部委員として入れることが必要である。

また、医療に身を置く者は医療現場の問題に慣れてしまい気づかない場合がある。さらに、医療従事者は医療の専門家であるが、必ずしも事実調査及び事実認定の専門家ではない。
したがって、医療に関する事故の調査であっても、原因究明・再発防止の観点から、医療分野以外から、事実調査及び事実認定に長けた外部委員を選任することが不可欠である。

医療事故調査では、調査によって事故当時の状況を明らかにするだけでは足りず、事故の発生前から発生後にかけての経過、発生した結果を総合して検討し、いずれかの時点で事故の発生を回避できる何らかの措置を執ることができなかったかという回顧的な視点での調査が必要となる。
さらに、調査から結論に至るプロセスが論理的かつ科学的なものか吟味されなければならない。

この点、医療事故問題に関与し上記の視点での調査及び事実認定を行うことに長けている弁護士や事故調査の手法について知見を有する有識者等は、委員会の中でその役割を果たすことができる。

現に、モデル事業の地域評価委員会や産科医療補償制度原因分析委員会・部会には、患者側弁護士が参加し、報告書の誠実性・論理性・科学性(資料を十分に検討しているか、結論と理由に論理的な整合性はあるか、合理的な科学的根拠が示されているか)や文章表現の正確性・分かりやすさを検討し、報告書を遺族、家族にとっても分かりやすい内容とする役割を担っている。

したがって、患者側弁護士や有識者等を院内事故調査委員会に外部委員として参加させることを義務づけるべきである。

(2)について

医療安全に関する市民活動をしている医療事故被害者等、患者代表者はいわゆる医療の素人ではあるが、外部委員としてこのような者の選任を検討することは、中立性・公正性・透明性の確保の観点からは望ましいことである。
その参加によって、多角的視点で調査を実施し、調査結果を誰にも説得性あるものとし、分かりやすい言葉で社会及び患者・家族に対し説明を尽くすことを期待できる。

したがって、このような患者代表者を参加させる重要性を、今後作成するガイドラインに明示し、医療機関が院内事故調査委員会に患者代表者を参加させることができるようにすべきである。


○ 外部の支援を円滑・迅速に受けることができるよう、その支援や連絡・調整を行う主体として、都道府県医師会、医療関係団体、大学病院、学術団体等を「支援法人・組織」として予め登録する仕組みを設けることとする。

〈意見の趣旨〉

第三者機関を中央事務局と複数の地域ブロック事務局で構成するものとし、地域ブロック単位で都道府県医師会、医療関係団体、大学病院、学術団体等が登録し、院内調査に外部委員を派遣する等の支援を行う。

〈意見の理由〉

「基本的あり方」では、各都道府県の「支援法人・組織」が院内調査の外部の支援を行い、第三者機関が行う調査に際し、案件ごとに第三者機関と一体となって調査を実施することとなっている。

しかし、一県一医大(一医学部)という地域も多い事情等を考慮すると、医療事故が発生した医療機関がある都道府県の医師会や大学病院等が院内調査の外部支援を行うのでは、十分に中立性・公正性を確保し得ない。
また、「支援法人・組織」が各都道府県ごとに登録されるようでは、細分化されすぎており、都道府県によって事故調査の内容・質に差が生じる可能性がある。
全国的に均一で質の高い調査分析を行うには、都道府県よりも広い地域でのブロック制を採用し、ブロック単位で登録された都道府県医師会、医療関係団体、大学病院、学術団体等が、院内調査に外部委員を派遣する等の支援を行うこととし、この調整をブロック事務局が行うべきである。

この点、日本医療安全調査機構の「診療行為に関連した死亡の調査分析事業のあり方」3頁においては、中央事務局を東京に1ヶ所設置し、全国を7ブロックに区分し、各ブロックにブロック事務局を設置することが提唱されており、このようなブロック制を敷くことが適当と考えられる。


○ 院内調査の報告書は、遺族に十分説明の上、開示しなければならないものとし、院内調査の実施費用は医療機関の負担とする。
なお、国は、医療機関が行う院内調査における解剖や死亡時画像診断に対する支援の充実を図るよう努めることとする。

〈意見の趣旨〉

院内事故調査の実施費用は、公的費用補助を行うものとし、当該医療機関の負担としない。

〈意見の理由〉

制度の目的と、その制度の財源を誰が拠出するかという問題は、密接な関連性がある。例えば、運輸安全委員会や消費者安全調査委員会における事故調査制度等、公的な性格を有する事故調査は、公費によってまかなわれることを通例とする。
対して、私的な紛争の解決を目的とする調査であれば、紛争の当事者らが費用を負担すべきこととなろう。

この点、院内調査を含む医療事故調査制度は、医療事故の原因究明及び再発防止を図り、これにより医療の安全と質の向上を図ることを目的とする公益性の高い制度である。
そうであれば、院内事故調査の実施費用を当該医療機関に負担させることは制度の目的にそぐわない。
また、医療機関が院内調査の費用を負担することから、診療行為に関連した死亡事例の届出を行わず、院内調査を実施することを避けようとすれば、上記目的を害する。

したがって、院内調査について、国や都道府県からの費用補助を行うものとすべきである。


○ 上記の院内事故調査の手順については、第三者機関への届け出を含め、厚生労働省においてガイドラインを策定する。

〈意見の趣旨〉

ガイドラインの策定過程においては、医療者や行政担当者のみならず、医療事故問題に関わっている弁護士(特に患者側弁護士)や事故調査の手法について知見を有する有識者、医療事故被害者を参加させる。

〈意見の理由〉

本項のガイドラインは、調査の対象となる医療事故が発生した場合に、医療機関が院内事故調査委員会を設置し、同委員会が院内調査を実施する等にあたり参照するものとなる。
ガイドラインは、これを参照することによって、どの医療機関においても、中立性、透明性、公正性等の確保された院内調査を行えるものでなくてはならない。

そのためには、ガイドラインの策定には、医療者や行政担当者だけでなく、中立性・透明性・公正性を備えた院内事故調査員会の設置・調査に必要な知識を有する者や、院内調査がこれらの性格を備えることを求める立場にある者を関与させることが不可欠である。

このような者として、医療事故問題に関わっている弁護士(特に患者側弁護士)、事故調査の手法について知見を有する有識者、医療安全に関する市民活動をしている医療事故被害者を、ガイドラインの策定に参加させる必要がある。

5.第三者機関のあり方について
○ 独立性・中立性・透明性・公正性・専門性を有する民間組織を設置する。

〈意見の趣旨〉

(1) 医療事故調査を行う第三者機関は公的機関とすべきであり、公的機関の下での医療事故調査制度には十分な国の財政的措置が講じられなければならない。

(2) 第三者機関の運営を検討する運営委員会には、医療者や行政担当者のみならず、患者側弁護士や事故調査の手法について知見を有する有識者、医療事故被害者を参加させなければならない。

〈意見の理由〉

(1)について

前記第1のとおり、医療事故調査制度は、医療事故の原因究明及び再発防止を図り、これにより医療の安全と質の向上を図ることを目的とするものでなければならない。
かかる公益目的の達成のためには、医療事故調査制度において医療事故の届出を受け医療事故調査を行う第三者機関は、国レベルでの公的な機関でなければならない。

そして、医療事故の原因究明及び再発防止により医療の安全及び医療の質の向上が図られるようにするためには、すべての診療行為に関連した死亡事例を調査の対象として原因究明及び再発防止に努めることが重要であり、全国的に均一で質の高い調査分析が行われなければならない。
公的機関はこのような調査分析ができる専門性を備え、全例の事故調査が行える人的物的資源を投入されたものでなければならず、公的機関の下での医療事故調査制度には十分な国の財政的措置が講じられなければならない。

(2)について

第三者機関が、独立性・中立性・透明性・公正性・専門性を有し運営されるべきことが必要であることは「基本的あり方」が示すとおりである。特に中立性・透明性・公正性が確保されなければ、第三者機関が院内調査の結果を追認するにすぎない機関となる危険性をはらむ。
「基本的あり方」はこれらの性格を担保する制度のあり方について言及していない。

第三者機関が中立性・透明性・公正性を確保するためには、第三者機関の運営を検討する運営委員会に、厚生労働省や医療者だけでなく、中立性・透明性・公正性を備えた第三者機関の運営に必要な知識を有する者や、第三者機関がこれらの性格を備えることを求める立場にある者を関与させることが不可欠である。

このような者として、患者側弁護士、事故調査の手法について知見を有する有識者、医療安全に関する市民活動をしている医療事故被害者を、参加させる必要がある。

現行のモデル事業や産科医療補償制度の運営委員会にも、患者側・医療側弁護士の2名と医療事故被害者が参加し、客観的な見解や制度のあるべき姿を述べ、論点を整理する等の役割を担っている。


○ 第三者機関は以下の内容を業務とすることとする。
  1. 医療機関からの求めに応じて行う院内調査の方法等に係る助言
  2. 医療機関から報告のあった院内調査結果の報告書に係る確認・検証・分析
  3. 遺族又は医療機関からの求めに応じて行う医療事故に係る調査
  4. 医療事故の再発防止策に係る普及・啓発
  5. 支援法人・組織や医療機関において事故調査等に携わる者への研修

〈意見の趣旨〉

(1) 院内調査結果が調査分析として不十分と判断される場合には、不十分な箇所を指摘し院内調査の結果を再検討するよう求めることとを業務として位置づける。

(2) 医療機関における安全管理の基準の見直し等、医療の安全の確保のために講ずべき施策について、関係行政機関に対して勧告・建議を行うことを業務として位置づける。

〈意見の理由〉

(1)について

第三者機関が行うとされる「医療機関から報告のあった院内調査結果の報告書に係る確認・検証・分析」の内容は、「基本的あり方」の記述からは不明である。

前記第1の2で述べたように、第三者機関は院内調査の調査結果の報告を受けた後、調査結果を査読し、院内調査結果が、医学的に誤った評価を行っている、検討すべき事項を検討していない等、調査分析として不十分と判断される場合には、不十分な箇所を指摘し院内調査の結果を再検討するよう求めることを第三者機関の業務とすべきである。
このようにして、院内調査についても全国的に均一で質の高い調査分析が行われるようにしなければならない。

この業務は、将来的に院内調査体制が整備されて、第三者機関から院内事故調査委員会に調査評価医を派遣し、調査分析を実施したり(いわゆる協働型)、院内で調査分析を実施し報告書を作成して、第三者機関がその提出を受け、院内調査の結果を事後評価するに留める(いわゆる院内型)ようになってくれば、院内調査の質を確保するため、第三者機関の業務として特に重要となっていくものである。

(2)について

医療の安全を確保するためには、行政機関が施策を講ずべき場合がある。医療機関における安全管理の基準の見直しは厚生労働省、救急搬送体制の見直しは総務省、大学病院医学部における教育の見直しは文部科学省が、それぞれ担当すべきことである。

医療事故をシステムの問題として捉え、院内調査結果及び第三者機関の調査結果等を踏まえ、医療事故の再発防止を図るためには、上記のような行政機関が講ずべき施策について、関係行政機関に対し、第三者機関が勧告・建議を行える仕組みでなければならない。


○ 第三者機関は、全国に一つの機関とし、調査の実施に際しては、案件ごとに各都道府県の「支援法人・組織」と一体となって行うこととする。
なお、調査に際しては、既に院内調査に関与している支援法人・組織と重複することがないようにすべきである。

〈意見の趣旨〉

(1) 第三者機関を中央事務局と複数の地域ブロック事務局で構成するものとし、地域ブロック単位で都道府県医師会、医療関係団体、大学病院、学術団体等が登録し、案件ごとに、登録された法人・組織に所属する医療者をもって構成される調査チームをブロック事務局に設置し、同調査チームが調査を実施する。

(2) 第三者機関による調査の中立性・透明性・公正性を確保するため、調査チームには、患者側弁護士や事故調査の手法について知見を有する有識者等を参加させなければならない。

(3) 医療事故被害者等の患者代表者を調査チームに参加させる重要性を、第三者機関の運用手順書等に明示する。

〈意見の理由〉

(1)について

「基本的あり方」では、各都道府県の「支援法人・組織」が院内調査の外部の支援を行い、第三者機関が行う調査に際し、案件ごとに第三者機関と一体となって調査を実施することとされる。

しかし、一県一医大(一医学部)という地域も多い事情等を考慮すると、医療事故が発生した医療機関がある都道府県の医師会や大学病院等が第三者機関と一体となって調査を実施するのでは、十分に中立性・公正性を確保し得ない。また、「支援法人・組織」が各都道府県ごとに登録されるようでは、細分化されすぎており、都道府県によって事故調査の内容・質に差が生じる可能性がある。
全国的に均一で質の高い調査分析を行うには、都道府県よりも広い地域でのブロック制を採用し、ブロック単位で登録された都道府県医師会、医療関係団体、大学病院、学術団体等に所属する医療者をもって、案件ごとに調査チームをブロック事務局に設置し、同調査チームが調査を実施するようにすべきである。

(2)について

「基本的あり方」は、第三者機関の調査における医療者以外の者の関与について何も言及していない。

院内事故調査委員会の外部委員として参加すべき者に関してすでに述べたとおり、医療事故調査の中立性・透明性を確保するためには、患者側弁護士等、医療者以外の患者の立場に立って活動を行う者を外部委員として入れることが必要である。
また、医療事故問題に関与し回顧的視点での調査及び事実認定を行うことや、調査から結論に至るプロセスの論理性・科学性の吟味に長けている弁護士や、事故調査の手法について知見を有する有識者等は、委員会の中でその役割を果たすことができる。
現に、モデル事業の地域評価委員会や産科医療補償制度原因分析委員会・部会には、患者側弁護士が参加し、報告書の誠実性・論理性・科学性(資料を十分に検討しているか、結論と理由に論理的な整合性はあるか、合理的な科学的根拠が示されているか)や文章表現の正確性・分かりやすさを検討し、報告書を遺族、家族にとっても分かりやすい内容とする役割を担っている。

したがって、患者側弁護士や有識者等を調査チームに参加させることを義務づけるべきである。

(3)について

医療安全に関する市民活動をしている医療事故被害者等、患者代表者はいわゆる医療の素人ではあるが、調査チームにこのような者を参加させることは、中立性・公正性・透明性の確保の観点からは望ましいことである。
その参加によって、多角的視点で調査を実施し、調査結果を誰にも説得性あるものとし、分かりやすい言葉で社会及び患者・家族に対し説明を尽くすことを期待できる。

したがって、このような患者代表者を参加させる重要性を、第三者機関の運用手順書等に明示し、第三者機関の調査にあたり患者代表者を調査チームに参加させることができるようにすべきである。


○ 第三者機関が実施する調査は、医療事故の原因究明及び再発防止を図るものであるとともに、遺族又は医療機関からの申請に基づき行うものであることから、その費用については、学会・医療関係団体からの負担金や国からの補助金に加え、調査を申請した者(遺族や医療機関)からも負担を求めるものの、制度の趣旨を踏まえ、申請を妨げることとならないよう十分配慮しつつ、負担のあり方について検討することとする。

〈意見の趣旨〉

第三者機関の調査につき公的費用補助を行うものとし、申請者に負担を求めない。

〈意見の理由〉

第三者機関による調査は、医療事故の原因究明及び再発防止を図り、これにより医療の安全と質の向上を図るという公益目的のために行われるものである。
そうであれば、その実施費用を当該医療機関に負担させることは制度の目的にそぐわない。

また、一般に院内死亡が「診療行為関連死」「事故」であるとの認識は、遺族の疑問や問題意識から始まる。診療行為に関連した死亡事例全例に対し原因究明及び再発防止を行い、医療の安全及び質の向上を図るためには、遺族からの直接申請に基づき、第三者機関が調査を行うことが重要である。
特に、調査の対象を「当該事案の発生を予期しなかったものに限る」とした場合には、前記のとおり、多くの医療事故事例が届出されないことが考えられる。そうである以上、死亡事故事例を第三者機関が全例把握し調査を行うためには、遺族による直接申請を受けることが不可欠である。
僅かであっても遺族に費用負担をさせることによって、遺族が申請を断念するような事態はあってはならない。

したがって、第三者機関の調査について、国や都道府県からの費用補助を行うものとすべきであり、申請者の費用負担とすべきではない。


○ 第三者機関からの警察への通報は行わない。
(医師が検案をして異状があると認めたときは、従前どおり、医師法第21条に基づき、医師から所轄警察署へ届け出る。)

〈意見の趣旨〉

第三者機関に届け出た事例については医師法21条の届け出を行ったものとみなすことを法律に定め、別途警察への24時間以内の届出を不要とする。

〈意見の理由〉

医師法21条との関係を整理しなければ、医療機関の不報告(調査不実施)によって、あるいは逆に医師法21条違反に問われることを回避するための届出を警察に行うことによって、刑事捜査が開始されることとなり、医療現場の混乱が続く。

そこで、本制度による医療機関の第三者機関への報告によって医師法21条の届出があったものとみなし、別途警察への24時間以内の届出を不要とすることによって、医師法21条にともなう混乱を回避することができる。


以 上

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