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弁護士 武 田 志 穂

 医療問題弁護団は、医療に関する諸問題について患者側の立場から関わっている団体であるが、医療紛争に際しては医療従事者の過失とは離れて製薬や医療器具の欠陥等が問題となることがある。医療問題弁護団の多くの団員も、薬害肝炎事件(フィブリノゲン製剤やクリスマシン製剤といった血液製剤に混入していたC型肝炎ウィルスに感染した患者らが、国と製薬企業の責任を求めて争っている裁判)などの薬害事件に関与している。

 国が使用を承認した製剤については、医師は有用な(有効性が危険性を上回る)薬との前提で患者に使用する。患者も、当然ながら医師の使用する薬に問題があるとは思わず、勧められるがままに使用する。しかしながら、歴史的にはサリドマイド(睡眠薬。副作用も少なく安全な薬と宣伝され発売されたが、これを服用した妊婦から手足のない奇形児が多く生まれた)、スモン(整腸剤。激しい腹痛を伴う下痢に続いて、足から次第に上に向かって、しびれ、痛み、麻痺が広がり、ときに視力障害をおこし、失明に至る)等、最近ではイレッサ(抗ガン剤。副作用の少ない夢の抗ガン剤として大々的に宣伝されたが、間質性肺炎などの副作用被害が続出した)やタミフル(インフルエンザ治療薬。服用後の異常行動が報道などで取り上げられた)など、薬害被害はあとを絶たない。

 このようなメジャーな薬害事件のほかにも、隠れた薬による被害は多数埋もれていると思われる。昨年23歳で亡くなった私の妹は、睡眠薬等服用後何度か異常行動を起こし(気がついたら消しゴムを食べていた、携帯電話がないと思ったら冷蔵庫のジャムの瓶の中にしまわれていて壊れていた等々)、最終的には自宅の浴槽で服を着たまま湯船につかった格好で、亡くなっていた。司法解剖の結果、やはり睡眠薬の成分が血中から検出された。私の従姉妹も、母親を助手席に乗せて車の運転を開始したものの母親が死の危険を感じるような異常なスピードで運転をしたため、慌てて母親が車を脇に寄せさせ従姉妹に確認すると、車を運転していたことを全く認識していなかったそうだ。彼女も睡眠薬の類の薬を服用していた。もしかしたら何か薬との相性が悪い遺伝的要素があるのかもしれないが、仮にそうだとしても私の周囲だけでこのような被害が起きているとはとても思えない。埋もれている被害は想像以上に存在するだろう。
 
 最近はセルフメディケーションとして、自ら積極的に市販薬を服用し、積極的に健康を管理していこうと奨励する向きもある。このような市販薬等の大量生産大量消費の中で、必要のない薬で新たな薬による被害が発生しないか、懸念を抱くものである。